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2025年01月20日号 (第528)

令和7年度税制改正 所得税①

 みなさん、こんにちは。正月休みと成人式の三連休の影響か、通常業務が遅れ気味になります。会計に関する業務は概ね月単位で動くのですが、なかなか取り戻せません。

 さて今回は、令和7年度税制改正の所得税の一回目ということで、目玉の改正である103万円の壁の改正について、ご紹介していきます。

基礎控除と給与所得控除の合計が103万円から123万円へ増額

 いわゆる「103万円の壁」の103万円とは、基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計金額です。簡単に言うと、給料で103万円の収入がある場合、他の控除が一切ない場合でも、給与所得控除と基礎控除により課税所得がゼロになるラインです。実際、パートや学生アルバイトの方で、収入金額が103万円に収まるように働く実務的な慣行がありました。

 税制改正大綱の冒頭部分では、103万円の壁は178万円を「目指して」、来年から引き下げると記載がありましたが、大綱の本文部分の記載は基礎控除58万円、給与所得控除65万円で、合計123万円となりました。

 実務的には、月に10万円稼いでも扶養家族でいられるという意味で、現実的な効果もそれなりに期待できます。さらに社会保険料の130万円の壁に変更がなければ、シンプルに今までより働きやすい環境になりそうだと感じました。

130万円の壁が撤廃?

 一方、130万円の壁と言う言葉があります。会社の規模にもよりますが、年収130万円までは社会保険上の扶養でいられる仕組みです。現状のままであれば、上記の基礎控除と給与所得控除の合計額より上回り、両者の金額的な差も小さくなるので、月に10万円は稼げるという目安としてはシンプルです。

 ところが社会保険の130万円の壁は撤廃され、給与収入70万円程度から社会保険の扶養から外れるという話が、昨年から報道されていました。令和7年度税制改正が公表される以前からの話題ですが、税制改正により働きやすくなる雰囲気が打ち消しになるような内容です。

 仮に130万円の壁が撤廃されれば、社会保険の扶養でいるために、年収を70万円程度に抑えるという動きが起こる可能性があります。税金面では123万円まで控除を引き上げたのに、相対的には、収入を増やす人より抑える人が増えてしまうとなると本末転倒ですが、別の制度であるだけに難しい問題です。報道によれば、130万円の壁を撤廃しても事業主負担の割合を大きくすることで、手取りの逆転現象は生じないような仕組みが取られるとのことですが、方向性が気になるところです。仮に事業主負担を増やすとなると、働く側の問題だけでなく、雇用する側への影響が大きくなります。

基礎控除と給与所得控除の詳細

 話を簡単にするために基礎控除58万円、給与所得控除65万円という記載をしましたが、実際は、所得金額や収入金額によって、下記のように控除額が段階的に変動する仕組みとなっています。

 基礎控除は、所得金額に応じて下記の控除額となります。

本人の合計所得金額基礎控除
2,350万円以下58万円
2,350万円超 2,400万円以下48万円
2,400万円超 2,450万円以下32万円
2,450万円超 2500万円以下16万円

 給与所得控除は、控除額の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられ、収入金額が増加するごとに、最大で195万円まで増加していく仕組みとなっています。

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